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春の里山の竹林で、孟宗竹のたけのこ掘りとたけのこご飯

春を感じる食べものの中でも、きっと多くの人にとって一番なじみ深い “たけのこ”。いつものスーパーに春の山菜と一緒にたけのこが並び始めると、「ああ、春がきたなあ」と感じます。

そんな旬を楽しむたけのこを掘る体験が、新宿から1時間ちょっとの大井町でできるのだそう。週末、日々のデスクワークでかたくなった身体を緩める気持ちで、東京からふらっと遊びに行ってみました。

今回のたけのこ掘りをサポートしてくださったのは、相和地区で兼業農家を営む、竹林の持ち主である鈴木裕也さん。

「今日は孟宗竹(もうそうちく)という種類の竹が生えている竹林で、たけのこを掘りたいと思います。この孟宗竹、昔は稲の掛け干しに使ったんですよ。だから、その度に切り出して使っていたんですけど、最近では使う人も減ってしまって竹林が荒れ放題になってしまって」

鈴木さんのお話によると、たけのこ掘りは竹林整備の意味合いが強いそう。そのため、シーズンになると毎年欠かさずたけのこ掘りをして、とれたものはその場で茹でて地域の皆へ配っているのだそうです。竹林整備のためとはいえ、春になるとご近所から茹でられたたけのこのおすそわけがあるなんて、なんて贅沢!

地面から20cmが目印。おいしいたけのこを求めて掘り進める

さて、配られた軍手にショベルを持って、2人組になっていざ竹林へ。一般的にはクワで掘りますが、今回は初心者仕様です。「地面から20cmくらい育ったたけのこがおいしいたけのこですよ」と教えてもらい、宝探しの気分で奥へ奥へと進みます。

竹林に入ってまず驚いたのは、その土のやわらかさ。東京での暮らしで人に踏みならされ固くなった土に慣れている身にとって、その踏みごこちは本当に感動もの。料理家の古谷暢康さんも語っていたこの地域の土の豊かさや綺麗さが、たったひと踏みで伝わってきます。

そしてお目当てのたけのこはというと、そこかしこにポコポコと生えていて、すぐに目に入ってくる状態。うーん、確かにこれは、一人で掘るのは大変かも……。

しかも、たけのこの周囲には竹の根が網のように生え広がっていて、ちょっとやそっとの力では掘り進めることはできません。

ショベルに全体重をのせて、息を切らせながら掘り続けること数分、やっとたけのこの根元(周囲の皮がなくなり赤くブツブツしていて根がたくさん生えている状態)が見えてきました。

ここで、たけのこを根から切り離す作業に移ります。この切り離し、実はコツがあるのだそうで。まずはそもそもの話になりますが、竹というのは周囲の竹どうしが地下茎でつながっている植物で、たけのこも地下茎の上に伸びています。

この地下茎とたけのこを切り離そうというのが「たけのこ掘り」ですが、そのとき意外にも役に立つのが、たけのこの先端にある黄緑のとがった部分。このとがった部分はいろんな方向に伸びていますが、そののびる方向と地下茎の向きが同じなのだそうで、掘り取るときはその先が向いている方角からショベルで切り込めば効率的に切り離すことができるのだそうです。

やっと慣れてきたかなと思ったところで、あっという間に予定の1時間を経過。育ち過ぎの巨大たけのこ、かわいらしい赤ちゃんたけのこなど、個性的な面々をゲットして竹林を後にしました。

やわらかな部分はお刺身で、かたい部分はメンマもどきで

終了後のアンケートによれば、全7チーム1時間でおよそ30〜40本のたけのこを掘れた模様。「まだまだ掘れる!」という意気込みの方が多いなか、後ろ髪ひかれながらもさっそく収穫したたけのこをあく抜きするため農産物加工場へと向かいます。

竹林から車で数分、到着するとすでに大きな釜にはお湯がたっぷり沸いていて、もくもくと白い湯気を立てていました。

ここでのあく抜きから調理までをサポートしてくださったのは、地域のお母さん方です。まずは、たけのこの皮むきから。皮の先を斜めに切って、それから縦に2つに割り、断面から皮と実の境目を見つけて指をグッと押し入れて、一気に皮をむいてしまいます。

「根っこに近い部分はかなり固くなっているので、そこは切って削いでもらえれば大丈夫です。小さいたけのこはやわらかいので、あく抜きせずにそのままお刺身として食べられますよ」

お母さん方にそう勧められさっそくその場でお刺身をいただくと、繊維が驚くほどやわらかく、甘く瑞々しい風味が口いっぱいに広がりました。参加者の皆からも、掘りたてならではのごちそうに絶賛の声。

一方でかたい部分はどうするのだろうと思っていたら、メンマもどきにするとおいしくいただけるのだそうです。“もどき”なのは、メンマと呼ばれるのは中国産だけだからなのだとか。

以下、お母さんの直伝レシピを皆さんにもシェア。

1.かたい部分を薄く縦にスライスする
2.フライパンに油をひいて鷹の爪で辛味を出す
3.たけのこ、顆粒のだしの素、酒を入れて蓋をして、少しの間煮詰める
4.砂糖、めんつゆを入れて、再び蓋をして煮詰める
5.味が染み込んで柔らかくなったら、最後にごま油をかけまわして炒めて、水気を飛ばす
6.完成!

他には、茹でたものをそのままサラダにしてマヨネーズと和えたり、煮物にして余ったら天ぷらにしてしまったりするのだそう。「この天ぷら、普通に天ぷらにするより味が染みてておいしいのよ」と、お母さん談。

たけのこご飯、竹の器でいただきます!

下ごしらえが終わったら、さっそく釜にたけのこを入れていきます。米ぬかが入ったお湯は、とてもきれいな黄土色。ちなみにこのお湯を沸かしているのは、相和地域でとれた薪なのだそう。1年寝かして乾かした薪は、よく燃えます。

あく抜きには1時間ほど時間がかかるので、茹で上がるまでの間に竹で今日の昼食をいただくための器づくりにとりかかることに。

器用に用意されていた竹は、孟宗竹と真竹(まだけ)と呼ばれる竹の2種類です。真竹も相和地域に生えていて、孟宗竹よりも1か月ほど遅い6月ごろがたけのこのシーズンになるのだそう。

孟宗竹は節の部分が1段、真竹は2段になっているのが見分けるポイントで、成長が一番激しい時期にはこの節間が1日で80cmくらい伸びたりするそうです。

「竹は上へいけばいくほど節間が長くなります。短い方が根に近い方ということですね。この節の部分は幹の中でコップの底のようになっているので、ここを使ってコップ型の器を作れます。また、節間がちょうどよければ、両端で切って真ん中で割って船底型の器にしてもいいかもしれませんね」

竹に触ってみると、どうやらそれぞれかなり厚みが違うようす。根っこの方に近ければ近いほど、そして節に近い部分ほど厚くなるものなのだそう。

久しぶりのノコギリに苦心しながらも2つの器を無事作り(欲張りました!)、竹のお箸まで作ってもらい大満足。同じく欲張りセットを完成させた参加者の女性とも、かわいいから2つとも作りたかったんだよねと盛り上がりました。

「たけのこご飯、炊けましたよー!」という声を合図に、お待ちかねのお昼の時間です。たけのこご飯は、最初からお米とおかずを一緒に炊いてしまうのではなく、別に煮た具を後から混ぜ合わせて作ったのだそう。その方が味にコクが出るのだとか。

人参とちくわと、油揚げとたけのこがたっぷり入ったたけのこご飯を自作の器に盛ってもらい、たけのこのお吸い物と一緒に「いただきます!」。

大山、富士山、みなとみらい、小田原が一望できる小高い丘で、晴天のなか食べるご飯はもちろん格別なおいしさでした。

集落の稲荷社と畑を守るための、竹林整備

「今日は皆さん、たけのこご飯をおいしく食べて楽しんでくださったと思うんですが、実は僕らにとって今日1日の皆さんの作業はすごく助けになることでした」

昼食後、皆を前にそう話してくれたのは、竹林の持ち主である鈴木さんです。

竹林がある柳地区は、相和地域の中でも日当たりの良い比較的平らな土地に位置していて、昔は酪農も盛んでのどかな農村風景が広がっていたのだそう。しかし現在、農家の高齢化と跡継ぎ不足で休耕地が増加して、その風景も変わりつつあるのだとか……。

そんななか鈴木さんは、おじいさんが亡くなったあと本職の大井町美化センターでの仕事の傍らその仕事を引き継ぎ、今日まで畑作業を続けている貴重な若手農家の一人です。

「放っておくと横に生え続ける竹林は、整備をしないと近くの畑や稲荷社まで広がってしまい、高く生えた葉が影を作り作物を枯らしてしまったり、稲荷社の森を壊してしまったりすることに繋がります。

また、竹林のなかに今日も大きな穴が2つあいていましたが、あれはイノシシがたけのこを掘って食べたあとなんです。今日は皆さんが入るから外していましたが、普段は罠の仕掛けをしています。しっかり竹林の整備をしないと、そのように獣害の被害も出てしまうんですね」

人口減少によって世代交代ができず、畑の管理がままならない状況にある家も増えてきている相和地域にとって、こうやって楽しみながら畑仕事を“手伝って”もらえる機会はとてもありがたいのだと鈴木さんは話します。

また、竹林でのたけのこ掘りだけではなく、地元の幼稚園児を招いて畑での収穫体験もされている鈴木さん。「一人でやっていても大変だしつまらないけれど、皆でやれば楽しいですから。それに、収穫した野菜が食卓での会話につながって、食育にもなるなら嬉しいなと思うんです」と、語ってくれました。

そうして相和地域のことを少しだけ学んだ昼食後、あく抜きも無事に終了。本当にたくさんのたけのこをお土産に、各々の帰路につきました。

土地と繋がる

「まずはメンマ、あとはたけのこご飯に、煮物も作ってしまおう」。帰り道、たけのこづくしの食卓に驚く家族の顔を思い浮かべて嬉しくなっていたら、ああこれが土地と“繋がる”ことかとふと思いました。

都市での日常にはない自然の景色や恵み、人々に出会いに行ったら、そこで暮らす人たちの喜びや助けに繋がって、日常に戻ってもそこから持ち帰った美味しいものや見てきた景色が家族や友人に広がっていく。

この循環を続けたくてきっとまたその土地を訪れて、そして積み重なった分だけもっともっと豊かになっていくのだろうなと、そんなことを考えた大井町訪問でした。