Retreat

0705/soba

自分で刈った蕎麦は、もっとおいしい?都心から1時間半、自然に触れる日帰りリトリート

今月の週末、どう過ごそうかな。仕事の合間に一息つくと、そんなことを考えてしまいますよね。

ふだん都内で働いていると、週末にまで都心で買い物をしたり、人の多い観光名所を回ったりするのにも、ちょっと疲れてしまう。

たまには自然の多い場所で、ゆっくりリフレッシュしたい。仕事ではずっと座った姿勢で頭ばかり使っているし、できれば体もちょっと動かしたい。1泊2日で遠くに出かけるのも大変だから、できれば都心から日帰りできるところで…。

そんなことを考えている時に、友人から教えてもらったのが、神奈川県の足柄にある大井町(おおいまち)という場所。農作業を手伝ってくれる人を探しており、「今の季節は蕎麦刈りが体験できるよ」とのことでした。

稲刈り後のおコメや、畑のもぎたての野菜がおいしく感じるように、蕎麦がどう育っているのかを見たり、自分で刈ったりしたら、もっとおいしいお蕎麦が食べられるのかも?

そんな期待を持って、蕎麦刈りに行ってきました。

休耕地をきっかけに生まれた、「そばの会」

会場となる蕎麦畑までは、小田急線新松田駅から車で10分ほど。新宿駅からロマンスカーに乗れば、道中も快適です。新宿からは、片道1時間半程度で着きました。

畑に着くと、瀬戸さんをはじめ、「そばの会」のメンバーの方たちが待っていてくれました。瀬戸さんは、大井町生まれの農家さん。蕎麦を刈り取る手順を教えてくれます。

今日はよろしくお願いします!

はい、まずは鎌を持った、持った。鎌で手を切らんように軍手もはめてね。日焼けすっから、麦わら帽子と首のタオルも忘れちゃいかんよ。じゃあ、まずはやって見せます。左手で株の根元をつかんで、右手で鎌を手前に引く。これだけです。

そう言って、サクサクと刈ってくれる瀬戸さん。しかし蕎麦は、稲のようにわかりやすく実が見当たりません。はじめて見る人は、雑草と勘違いしてしまいそう。

えっと…。蕎麦の実って、どれですか?

この茶色いのが実。割ると白い中身が出てくるでしょ?これがそば粉のもと。実を乾燥させて、この中身をとるわけです。

か、かなり小さい…!4~5ミリくらいですね。……これだと、みんなが食べられる分の蕎麦粉をとるまでに、かなり作業しないといけなんじゃないですか?

蕎麦は刈ってからしばらく干さないといけないから、今日刈る分は食べられなくってね。食べる分の蕎麦粉は別に用意してあるから大丈夫だよ。

蕎麦は、1アール(10m×10m)で、ようやく4~5kgの実がとれるんだよね。ここは無農薬で育ててるんで、農薬を使った時よりも収量が少ない。雀や鳥に食われたりもする。

蕎麦って貴重な食べ物だったんですね…。丁寧に刈ります。

刈ったやつは、ござの上に置いてね。ある程度刈れたら、雑草とかはよりわけて、藁で根元をゆわえます。干しているときに滑り落ちないように、根本はそろえてね。

今回の企画をコーディネートしてくれた、小宮眞也さんにも話を聞いてみます。眞也さんも大井町生まれの農家さん。「そばの会」のまとめ役でもあります。

「そばの会」はどういう風に始まったんですか?

このへん一帯は、俺が子どものころは、相和村(そうわむら)っていう村だったんだよね。60年ほど前に合併しちゃったけれど、そばの会の正式名称は「そうわそばの会」。

今、蕎麦が植えてある畑があるところは、古くは田んぼが広がっていて、「山田」と呼ばれるエリアなんだ。でも、農家さんたちも高齢化してきちゃったもんだから、田んぼや畑がどんどん休耕地になっちまって。

休耕地が増えているって、あちこちの田舎でよく聞きますね。そこで、なぜそばを…?

蕎麦なら荒れた土地でも育つし、稲作よりも手がかからないって聞いたもんで。じゃあやってみっか、と。まあ、やってみたら結構手間がかかったんだけどね(笑)

7年前にはじめて、今では相和地域の人や近隣の人、30名ほどが参加しています。

今日みたいに若い人が参加してくれることは少ないもんで、みんな喜んでますよ。

そんな話を聞いているうちに、少しずつ作業が進んでいきます。ゆわえた蕎麦の束を真ん中で半分に割り、ポールにひっかけて、はざかけが完成。こうして1週間ほど、天日干しにするそうです。

こちらは、1週間ほど前にはざかけが完成した、別の蕎麦畑。茎が乾いて茶色くなっています。機械を使って脱穀してしまうところも多く、こうして蕎麦をはざかけにしている風景は、貴重なもののようです。

みんなの性格が出る、蕎麦打ち

畑での作業を終えた後は、「農業体験施設 四季の里」というスペースへと移動して、蕎麦打ち。このスペースには、調理体験できるスペースや、地元で採れた野菜の直売所があります。

今回は、昨年収穫した蕎麦でつくった蕎麦粉を、「そばの会」のみなさんが用意していてくれました。手を入れてみると、さらさらできもちいい…! 円を描くように水を入れ、全体に水が回るように、両手でなじませていきます。後半、こねていくのは結構力が必要なので、女性は体重をうまく使うのがいいかもしれませんね。

手の感触を楽しみながら、みんな無心に、ぎゅっぎゅっとこねていきます。ひとつにまとまったら、くっつかないように板に粉を打ち、こねた蕎麦粉を薄く伸ばしていきます。真ん中から外側へと手をすべらせながら麺棒を転がすのですが、なかなか難しい…。均一に伸ばすために、二人がかりでやる人も。

蕎麦打ち経験がある人は少ないのですが、わからなくなったら、そばの会のメンバーが手伝ってくれます。

薄くのばしたら、粉をまぶしながら折りたたんで長方形に。これを切ると、蕎麦になるんですね。蕎麦を切るコツを、眞也さんが実演してくれます。

「板を少しずつずらしながら、等間隔になるように、切っていきます。包丁の重みを、垂直に落とすような感じで」

私はA型なので、少しずつ慎重に切りました。なかなか性格が出る作業…。「そばの会」のメンバーに、「はじめての割にはきれい、きれい」と言われ、ほっと一安心。

切れたら、それぞれの分をゆでて盛り付けて、できあがり。かなり太さにムラがある人もいましたが、これはこれで手づくりのご愛敬ですね。

食べてみると、ふだん食べているような蕎麦とはぜんぜん違う。ふだんランチに食べているような蕎麦は、のど越しがつるりとしていて薄味なのですが、これは噛み応えと甘味があります。

午前中の作業でおなかが空いていたこともあって、みんな話もそこそこに、蕎麦をすすっています。1人あたり300gの蕎麦を打ったのですが、食べきってしまう人も多かったです。食べきれない人は、持ち返っておみやげに。

トトロに出てきそうな木に、みんなで手を合わせる

蕎麦を食べた後は、高台でひとやすみ。下には、先ほど作業していた畑のある山田地域が見えています。天気がいい日は、遠くに小田原城なども見えます。景色を眺めながら、しばし、ぼーっとする人も。

おなかが落ち着いたところで、深呼吸しながらゆっくり散歩すると、いろんなものをあちこちに見つけます。

地面には、赤いビーズを敷き詰めたような、ヤマモモがごろごろ。今回は熟れて落ちてしまっていますが、収穫してジャムやお酒をつくることもできるそうです。

これは、オニヤンマ。農家さんに聞いてみると、「卵を産む場所を探しているんじゃないかな」とのことでした。

みんなで地域をウォーキング。ちなみに手に持っているビニール袋は、「四季の里」の直売所で買った、地元の野菜。安いので、ついたくさん買い過ぎてしまいました。

最後に行ったのが、赤田という集落にある、大きなシイノキ。「トトロの木みたい~」と声をあげる人も。

樹齢400年ほどと推測されている大きなシイノキには、「だいじんごさん」(大神宮さん)と呼ばれる神さまがいるそうで、みんなで手を合わせます。

秋には、地域の子どもたちが木の下でどんぐりを拾って遊んだり、年末には、年越しそばがお供えされたりしているそう。子どもの成長の節目に感謝をこめてシイノキをお参りしたりする家族もいるとのことで、地域に愛されている木なんですね。

都市から月に1回通う、という地域とのかかわり方

今回参加した人の中には、「稲刈りやみかん狩りもできるらしいし、別の季節にもまた来てみたいね」「薬草が採れるらしいから、そういうワークショップをやるのもいいかも」なんて話も出ていました。

自然は好きだけど、仕事も好きだし、都市生活ならではの便利さも大事。地方に移住したりするのはちょっと難しい私たち。

けれど、たまに近くの自然に触れにいって、体を動かして汗をかいてリフレッシュする。パソコンのモニターから離れて、土や風の匂いを感じる時間を持ってみる。それくらいならできそうだし、それは体にも心にもいいことなんじゃないかなって思います。

都市に住む私たちがたまに遊びに行くことは、地域の休耕地を活用すること、昔ながらの風景を維持していくことにもつながります。

自然の中でちょっと体を動かして、おいしいものを食べて、ゆっくりする。そんな農体験型リトリートが広まれば、地域に暮らす人も、都市で暮らす私たちも、すこし豊かになるのかもしれませんね。

蕎麦刈りは、7月に夏蕎麦と、10月に秋蕎麦の蕎麦刈りのシーズンがあります。季節のイベント開催は、facebookページよりご案内しています。