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0909/kuri

天空の栗畑での栗拾いと、お母さんの栗の渋皮煮

昼の残暑は厳しく感じられても、日が落ちるとひんやりと空気が冷たい9月初旬。秋の足音が聞こえてくるこの時期、新宿から電車で80分の神奈川県大井町の里山では栗の収穫が始まります。

今回、地元の農家さんの畑で栗拾い体験を楽しむことができると聞き、台風が無事に過ぎ去った晴天の日曜日、秋を味わうべく大井町へと向かいました!

たわわに実る、「栗の王様」を拾いに

今回お世話になった畑があるのは、大井町相和地域の「赤田」と呼ばれる地区です(赤田地区の歴史については、こちらの記事後半に詳しいです)。作物は一般的に、

1.極早生(ごくわせ)
2.早生(わせ) 
3.中生(なかて) 
4.晩成(おくて)

と、収穫期までの栽培期間で分類されますが、赤田地区で栽培されているのは早生に分類される収穫期が9月初旬からの品種がほとんどだそうです。

ただ、今回お世話になった夏苅さんの畑で栽培しているのは「利平(りへい)」と呼ばれる中生に分類される品種。中生種は平均的には9月中旬以降の収穫が一般的だそうですが、今年は猛暑でずいぶんと収穫時期が早くなったのだそうです。

食感が良く甘みも強い栗の利平は、「栗の王様」とも呼ばれているのだとか。美味しいけれど収穫量が少なく、「幻の栗」と呼ばれることもあるのだそう。そんな貴重な栗の採れたてを味わえるとなると、ますますやる気が湧いてきます。

さて、さっそく畑に入っていくと、木にはたわわに実った毬栗(いがぐり)たちが。そしてそれぞれの木の下に、茶色く熟した毬栗たちが落ちています。

栗は木に実った毬栗から直接採るのではなく、食べごろになり自然と大地に落ちた毬栗から収穫するもの。そしてまれに栗だけ転げ落ちているときもありますが、大抵はイガに包まれたまま転がっているので収穫時には注意が必要です。長袖長ズボンに帽子をかぶり、できれば長靴を履き、革手袋にトングを持って挑みます。

下ばかり見て木にぶつからないよう気をつけながら、たくさんの毬栗が落ちている木を見つけて拾っていきます。イガは緑色なほどかたく、茶色に熟しているものほど柔らかいのだそう。イガがあまり開いていない毬栗はトングを使ってまず広げてから、特にイガがまだ緑色のものは慎重に、中の栗を取り出していきます。

取り出してみると、すでに虫に食べられている栗も少なくありません。もったいない気もしますが、そのまま転がしておけばその土地の肥やしになります。きれいな栗を選びとって集めていくこと数十分、籠に山盛りの栗が収穫できました。

収穫を終え地域の農産物加工場に戻ると、お母さんたちが焼いてくれた焼き栗が参加者の皆に振る舞われました。

パリパリに焼けた鬼皮を思いきって割ると、ほくほくの栗の実があらわれます。しっとりとした舌触りが特徴の茹で栗とは違い、口に含むとほろほろと柔らかな味わいが広がります。

個人的には茹でたり蒸したり、炊き込みご飯にしたりすることが多い栗でしたが、目にも楽しい焼き栗は家でも家族に振る舞ってみたいと感じる素朴な美味しさでした。

栗農家さんに教わる、絶品栗の渋皮煮

さて、収穫後は戦利品である1kgの栗を手に、この栗を美味しくいただくためのレシピを教わりに相和地域で暮らす國島和子さんのお宅に突撃です。

國島さんは篠窪地区で八重桜と栗の兼業農家を営んでいて、春には八重桜の収穫(記事はこちら)でもお世話になりました。渋皮煮については、ご自身の畑で収穫された栗で毎年5〜10kgと作り、地域の仲間の方々と渋皮煮の美味しい作り方について毎年実験し合っているのだというから驚きです。

1.専用ナイフで鬼皮剥き

まず、採れたての栗の鬼皮を剥いていきます。鬼皮とは、一番外側の固い皮のこと。採れたてであればあるほど皮が柔らかく、簡単に剥くことができます。スーパーで購入した栗など少し保存期間がたっているものは、水にしばらく浸しておいたり軽く茹でると剥きやすくなります。

普通の包丁でも頑張れば剥くことはできますが、栗の皮むき専用のナイフで剥くとあっという間です(ちなみに國島さんのおすすめは、サンクラフトというメーカーの栗の皮むきナイフ。100円均一でも売っているそうですが、やはり切れ味が違うようです)。私も購入して家で使ってみましたが、今までの包丁での努力が何だったのかと思うほど簡単に剥けるようになりました。

ただ、たとえ専用ナイフを使用しても栗を1つも傷つけずに剥き終えるには技が必要。國島さんも、うまくいったときには「1kgを一粒も傷をつけないでやれたのよ」と仲間同士で自慢し合ったりしているのだそうです。

2.重曹であく抜き

さて、鬼皮を剥いたら次はあく抜きです。渋皮は残したまま鍋に栗を入れ、頭までしっかり隠れるくらい水をたっぷりと入れて(栗が空気に触れるとその部分だけ黒く変色してしまうそうです)、栗1kgにつき大さじ1.5程度の重曹を入れて火にかけます。一度沸騰したら火を弱火にし、食べられるくらい柔らかくなるまで煮ます。

このとき、使用する重曹や砂糖はなるべく新しいものの方が美味しくできるのだとか。以前、國島さんがご友人たちと昨年の余りの重曹と新品の重曹を使ってあく抜きしてみたところ、やっぱり新しいものの方が美味しくできたとのことでした。

このあく抜きは、全部で3度行います。ここでポイントになるのは、1度目のあく抜きで栗を食べられるくらい柔らかく煮てしまうこと。しっかり味見をして柔らかさを確認することが、その後の成功を左右するのだそうです。そしてあく抜きの最中には、しっかりと鍋のアクをすくい取ることもポイントです。

2度目、3度目のあく抜きに関しては、同じように火にかけますが、煮立ったらすぐに火を止めてしまいすぐに湯を捨ててしまって大丈夫です。

3.爪楊枝で筋とり

1度目のあく抜きを終えたら、流水に栗をさらしながら爪楊枝を使って鬼皮の筋を取り除きます。

細かな筋を取り除くこの作業が、唯一渋皮煮づくりの中で大変なのだと言う國島さん。私も家で作ってみましたが、確かにこの作業以外は専用ナイフを購入してしまえば本当に簡単な渋皮煮づくりでした。

4.砂糖で煮詰めて、隠し味に醤油とみりんを加えたら完成

さて、3度のあく抜きを終えたら、いよいよ砂糖を入れて煮詰めていきます。充分に柔らかくなった栗にかぶるくらいの水を入れ、栗の3割〜半量の砂糖を(量はお好みで)2、3回に分けて入れていきます。

砂糖は冷めるときに味が染み込んでいくため、砂糖が溶けるくらいに温まったらすぐに火を止めてしばらく冷まします。これを2、3度繰り返して、最後の隠し味にお醤油やみりんを少し加えて(國島さんは大さじ1程度加えるそうです)できあがりです。

冷ます時間は、本当にそのときどきなのだそう。3日かけて作るときもあれば、一晩で作りきってしまうこともあるそうです。砂糖も、一種類だけでなくそのとき家にある蜂蜜や黒砂糖などを混ぜてみたりしているそうです。

隠し味には、ワインやブランデー、ラム酒などのお酒類を入れる人もいるのだとか。

國島さんいわく、「ワインは少し渋みが出てしまって、ブランデーもあまり味が残らなかったんだけれど、ラム酒は風味が残って美味しかった」とのこと。ただ、「やっぱりシンプルにお砂糖とお醤油が一番。あとは黒砂糖を使うと和菓子っぽさが増して美味しいわ」と言っていました。

5.密封容器で、冷蔵保存1か月

完成した渋皮煮は、煮汁でひたひたに浸して密封容器で保存します。冷蔵保存で1か月程度、冷凍でも楽しめるそうです(ただし、解凍したらなるべく早めに食べないと水っぽくなりすぎるそうです)。

渋皮煮はそのまま熱いお茶うけにしても美味しいですが、ロールケーキに入れたり栗ご飯にしたり、アイスクリームやヨーグルトに添えても美味しいのだそう。ちなみに私もパウンドケーキに入れてみたりしましたが、丸っとした栗をそのままいただく渋皮煮そのものが、何だかんだ一番美味しく感じられたような気がします。

最後にレシピを再掲しておきます。秋の豊かさを、里山のお母さんが毎年作っているレシピでぜひ味わってみてくださいね。

里山のお母さんの、栗の渋皮煮

1.栗の鬼皮を剥く
2.渋皮をつけたまま、かぶるくらいの水であく抜きを3回する
1回目:栗1kgに対し重曹大さじ1.5程度を入れ、アクをとりながら柔らかくなるまで30分程度煮る。最後、食べられるくらい柔らかくなったか味見をする。湯を捨て、流水に栗をさらしながら筋を爪楊枝で取り除く
2回目:1回目と同様に火にかける。くつくつと鍋が音をたて始めたらすぐに火を止め、湯を捨てる
3回目:2回目と同様
3.栗の3割〜半量の砂糖で、2〜3回に分けて煮詰める
4.最後、隠し味に醤油やみりんを大さじ1程度入れて完成
5.煮汁にひたひたに浸して密封容器で保存する。冷蔵保存では1か月を目安にいただく