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土が綺麗なら、食べられる。大井町の里山の土を食べる、根菜収穫体験と巻繊汁づくり

野菜を、泥がついたまま、皮ごと食べたことはありますか? なんとなく汚いイメージがあるかもしれませんが、綺麗な土でつくられた野菜は、皮や泥ごと、そのまま食べられるんだそう。

11月26日、大井町の里山に毎年通い続けている料理家さんを呼んで、「大井町の里山の土を食べる」をテーマにした、野菜の収穫体験と料理づくりが大井町で開催されました。

「土を食べるってどういうことだろう?そもそもおいしいのかな…?」という疑問を持ちながらも、新宿から1時間半ほどの大井町へと向かってみました。

今日つくる料理は、地域で採れた根菜をたっぷりと使った、巻繊(けんちん)汁。まずは材料となる根菜を、地元の人から分けてもらおうということで、畑へ向かうところから始まりました。

ふだんは地元の人しか通らないような、田んぼの畦道をみんなで歩いていきます。

たどり着いたのは、山田地区に住む森谷さんのお宅。今でも山神の祠を祀り、観音堂で念仏を唱えるという信心深いおばあちゃんが住んでいます。

80代になりますが、今でも男並みに草刈り機を動かしながら、農作業を続けているおばあちゃん。家の裏手をのぼっていったところにある畑で、大根を分けてもらうことになりました。

参加した5歳の男の子は、大根を抜くのははじめてとのこと。よく育っている大根をおばあちゃんに教えてもらい、両手で引っこ抜きます。

次に行ったのは、里芋を育てている、別の農家さんの畑。ここの畑では、無農薬で野菜を育てているそうです。

肥料も、化学肥料は使わずに、里山の落ち葉を発酵させてつくった堆肥を使っています。よく手入れをしているからなのか、歩くと土がふかふかしていて、とても柔らかい。土ってこんなに柔らかかったんだな、と少し驚きました。

大根は手で引っこ抜くことができましたが、里芋は広く根をはっており、芋に傷がつかないように、少し大きめに芋の周囲を鍬で掘って収穫します。でも、やってみるとなかなか難しい。最初はうまく鍬が刺さりませんが、農家さんに腰の入れ方を教えてもらいながら、どうにか収穫できました。

材料を収穫したら、次は料理。

料理を教えてくれるのは、古谷暢康(ふるや・のぶやす)さん。精進料理を京都で学んだり、ポルトガル・トルコなど地中海周辺で各地のローカル料理を学んできた、料理家です。

今日つくる巻繊汁は、もともと精進料理のひとつ。仏教の決まりに基づき、動物の殺生などを行わずに植物性の素材だけを使ったものを、精進料理といいます。

今回は中国の精進料理のテイストを加えて、油を使った巻繊汁をつくります。根菜を油で炒めることによって、野菜の旨味が抽出され、ボリュームが出て腹持ちもよくなるそう。日本にはない作り方だそうで、期待がふくらみます。

説明を聞き、さっそく収穫した野菜を洗って皮を剥こうとした参加者たち。そこに、古谷さんから「ちょっと待って」と声が。

「泥がおいしいので、今回は皮ごと使います。せっかく無農薬で育てていて土が綺麗なんだから、皮を捨ててしまうなんてもったいないです」とのこと。

古谷さんは、年間20回以上この里山を訪れ、四季ごとに採れる農作物にあわせて、さまざまな料理をつくってきました。世界中のいろんな地域を巡ってきた古谷さんから見ても、ここの土は豊かで、とても綺麗なんだそう。

収穫してきた根菜は、ざっと洗ってひげを取るだけにしました。なかには、「泥がついている野菜って、どうやって洗うの?洗ったことない」という参加者も。確かに土から掘り起こしたままの野菜は、都会で生活していると、あまり目にすることのないものです。

古谷さんによると、スーパーで売っている野菜は一見綺麗に見えるけれど、育てているときに農薬を使っている可能性が高いので、よく洗って皮を剥いた方がいいそう。今回、皮ごと食べる料理がつくれるのは、無農薬だからこそとのこと。

「野菜は、皮と実の間にうまみがぎゅっとつまっているので、こうして皮ごと使えるのは、とても贅沢なこと」と、古谷さんは話します。

里芋をゴロっとした感じが残るようにざくざくと大き目に切り、大根・にんじん・レンコン・ごぼうなど他の根菜類も切ったら、羽釜に入れて油をどぼどぼっと大量に注ぎ、強火で炒めていきます。

精進料理はヘルシーなものかと思っていたけど、こんなに油を使うのには、びっくり。使っている油は、ゴマ油と菜種油のブレンドです。ゴマ油でコクを出しつつも、菜種油をいれることでさっぱりとした仕上がりになるそう。

使う野菜は葉物はダメですが、根菜なら何を入れても大丈夫。根菜は日持ちがするため、実際にお寺で作る際は、1,000人分位をいっぺんにつくり、ご飯のおかずとして何日かに分けて食べるそうです。

軽く焦げ目がつくくらいまでじっくりと炒めたら、しいたけでとった出汁と、水を投入。今回は、大井町の湧き水を使いました。

そして、切った昆布や千切りにした干し大根、油揚げ、お麩、厚揚げなどを入れ、煮込みます。野菜のアクなどは、旨味でもあるので、あえて取らないそう。

最後に手でくずした豆腐を入れ、醤油で味を調えて完成。味付けには、塩や味噌を使う場合もあるとのことでした。「無い材料は入れなくてもいいし、ある材料でつくれば大丈夫」という、自由度が高いもののようです。

完成した巻繊汁は、ごらんのとおり皮つき。地元の人も、「ずっと野菜を育ててきたけれど、皮つきのままなんて初めて食べる」と言っていました。

食べてみると、思っていたよりもとてもクリーミー!

泥や皮がついたままってどんな味なんだろう…、ちょっと苦みがあるのかな…と思っていたけど、全くそんなことはなく、里芋のうまみがまろやかに広がります。

2杯、3杯とおかわりする参加者も。

「土が綺麗だと、土って食べれるものだったんですね。これまで知らなかったし、泥ってなんとなく汚いイメージがあったけど…。無農薬で農家さんが畑を続けてきたからこその、贅沢な料理ですね」「車窓からたまに畑を見かける機会はあっても、実際に畑に入れる機会ってなかなかないので、貴重な体験でした」との声があがりました。

都市に住んでいると、毎日歩くのは、基本的にコンクリートの上。土に触れる機会ってほとんどありません。でも少し田舎に来てみると、それは逆転する。

古谷さんによると、地域ごとにそれぞれの土によって、味も違うそうです。

最近は大規模農業による農薬使用が増えて、土を食べられる畑も減っているのかもしれませんが、昔はきっと「土を食べる」って当たり前だったし、そこの土地ならでは、そこの土ならではの味があったんだろうなと思います。

なお、調理で余った里芋を分けてもらって、家でもレシピを再現してみたのですが、なぜだか少し違う味になりました。湧き水の味だったり、里山の空気だったり、そういうものも美味しさには影響するのかもしれません。

オーガニックスーパーなどで無農薬野菜が手に入ったら、皮ごとの調理を試してみてほしいですが、ぜひ1度は、現地の豊かな自然の中で、土を味わってみてくださいね。

◎「土を食べる」皮付き巻繊汁のレシピ◎

材料(4人分)
・里芋4個
・大根5センチ
・人参1/2本
・ごぼう1本
・蓮根5センチ
  ※ 里芋以外の根菜は、あるもので大丈夫です
・しいたけの出汁1リットル
・昆布1枚
・干し大根ひとつかみ
・油揚げ1枚
・お麩2枚
・厚揚げ1個
・豆腐1/2丁
・ごま油30ml、菜種油30ml
・醤油大さじ2

作り方
里芋を皮ごとざっと洗い、大きめに切る
根菜類は、大根・人参・蓮根はいちょう切り、ごぼうは斜めに切る
ごま油・菜種油をブレンドし、強火で里芋と根菜をいため、油を染みこませる
焼き色がつくくらいまで炒めたら、しいたけの出汁を投入
昆布、干し大根、油揚げ、お麩、厚揚げを入れて煮込む
野菜が柔らかくなったら、崩した豆腐を入れ、醤油で味を調える